施設に入った親の家が空き家になり、費用に充てるために売りたいというご相談が増えています。ところが親の判断能力が低下していると、本人名義のままでは契約ができません。子が代わりにサインすることもできません。ここでは成年後見という制度を使って売却にたどり着くまでの道のりを説明します。
なぜ子が代わりに売れないのか
不動産の売買は本人の意思に基づく契約です。認知症などで判断能力を欠く状態になると、本人は有効な契約を結べません。家族であっても、法律上の代理権がなければ代わりに契約することはできません。実印と権利証を預かっているから大丈夫という説明を受けることがありますが、後から契約を無効だと争われる余地が残ります。金融機関や司法書士は本人の意思確認を行うため、実務上もそこで止まります。
成年後見には3つの類型がある
判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の3つに分かれます。日常的な買い物も一人では難しいという状態であれば後見、重要な財産行為に不安がある程度なら保佐や補助が選ばれます。どれに当たるかは医師の診断書をもとに家庭裁判所が判断します。不動産の売却を目的とする場合、後見であれば成年後見人に代理権がありますが、保佐や補助では個別に代理権を付与してもらう必要があります。
申立てから選任までの流れ
本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。申立てができるのは本人、配偶者、四親等内の親族などです。必要書類は申立書、本人の戸籍と住民票、診断書、財産目録、収支予定表などで、準備だけで1か月前後かかることも珍しくありません。提出後は調査官の面談や親族への意向照会が行われ、選任までの期間はおおむね1か月から2か月程度が目安です。
居住用不動産の売却には別途許可が要る
ここが最も見落とされやすい点です。後見人が選ばれても、本人が住んでいた居住用不動産を処分するには、家庭裁判所の許可が別に必要です。本人の生活の基盤を失わせる行為だからです。許可の申立てでは、売却の必要性、売却条件の妥当性、代金の使い道を説明します。査定書や売買契約書の案を添えるのが一般的で、許可が出るまでにさらに1か月前後を見ておく必要があります。
後見人に親族が選ばれるとは限らない
申立てのときに候補者を挙げることはできますが、最終的に誰を選ぶかは家庭裁判所が決めます。財産が多い、親族間に意見の対立がある、不動産の売却を予定しているといった事情があると、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれる傾向があります。専門職が就いた場合は報酬が発生し、本人の財産から支払われます。金額は財産額に応じて家庭裁判所が決めます。
後見は売却が終わっても続く
不動産を売るためだけに後見を申し立てても、売却が済んだからといって終わりにはなりません。後見は原則として本人が亡くなるまで続き、毎年の報告義務も伴います。この負担を避けたいという理由で、判断能力があるうちに家族信託や任意後見を準備する方が増えています。すでに判断能力が低下している場合はこれらを選べないため、時間との勝負になる制度だと理解しておいてください。
売却の前に空き家の管理をどうするか
申立てから許可まで合計で3か月以上かかることを考えると、その間の空き家の管理が課題になります。水道を完全に止めると排水口の封水が蒸発して臭いや虫が上がってきますし、郵便物が溜まると留守であることが外から分かります。最低でも月に一度は換気と通水を行い、庭木が道路にはみ出していないかを確認してください。遠方で通えない場合は、費用はかかりますが管理代行を使う選択もあります。
よくあるご質問
Q. 本人が施設に入っていれば居住用には当たりませんか
A. 施設入所後でも、帰る可能性のある自宅は居住用不動産として扱われるのが通常です。判断は家庭裁判所が行いますので、許可は不要と自己判断しないでください。
Q. 費用はどのくらいかかりますか
A. 申立ての実費は収入印紙や郵券、診断書代などで1万円台から数万円です。鑑定が必要になると別途10万円程度、専門職が後見人になれば年間の報酬も発生します。
Q. 家族信託との違いは何ですか
A. 家族信託は本人に判断能力があるうちに契約する仕組みで、柔軟に財産を管理できます。判断能力が低下した後では契約できないため、その時点では成年後見しか選べません。
まとめ
認知症の親の家は、本人名義のままでは家族でも売却できません。成年後見を申し立て、後見人が選ばれ、さらに居住用不動産の売却許可を得るという三段階が必要で、合計で3か月以上を見込むのが現実的です。後見は売却後も続く制度である点も押さえておきましょう。判断能力があるうちであれば家族信託という選択肢もありますので、迷っている段階で一度ご相談ください。
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この記事の執筆・監修
株式会社ユナイテッドコーポレーション(代表:栂 淳也)|宅地建物取引業 大阪府知事(4)第54181号|大阪で創業20年。不動産の売買・買取、空き家・ボロ戸建の再生を手がけるほか、オリジナルブランドJUREMIの物販とiOSアプリ開発を自社で運営しています。会社概要/代表挨拶
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