「不動産投資は節税になりますよ。所得税・住民税がかなり戻ってきます」——こんな営業トークを、一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
この「節税効果」という言葉に惹かれて、新築ワンルームマンション投資に踏み切った方が、毎年どれだけいるか。私・投資家JACKは、大阪で不動産投資のコアメンバーサロンを11年間運営してきましたが、この「節税トーク」にやられて失敗した人を、本当に何百人と見てきました。
今回はこの「節税効果」という営業トークの実態を、数字を使って徹底的に解説します。「節税になると聞いて投資を始めようとしている」「すでに始めてしまったがモヤモヤしている」という方は、ぜひ最後まで読んでください。
そもそも「節税になる」の仕組みとは何か
まず、不動産投資で「節税になる」と言われる仕組みを整理しましょう。
不動産投資では、建物部分の取得費用を「減価償却」として毎年経費に計上できます。たとえば、建物部分の価格が2,000万円で耐用年数が47年(鉄筋コンクリート造の場合)の場合、毎年約42万5,000円を経費として申告できます。
この減価償却費が不動産所得を赤字にし、その赤字を給与所得と損益通算することで、課税所得が下がり、結果として所得税・住民税が還付される——これが節税の仕組みです。
確かに、仕組みとしては存在します。問題は「それが本当に得なのか」という点にあります。そして多くの場合、この仕組みは投資家にとってではなく、物件を売る業者にとって都合のいいものになっています。
節税効果があるのは「最初の数年だけ」という現実
営業マンが説明するのは、たいてい購入直後の節税効果だけです。しかし、不動産投資の節税効果には「賞味期限」があることを、ほとんど説明してくれません。
新築ワンルームマンションを購入すると、最初の数年間は「登記費用」「不動産取得税」「ローンの利息」「管理費」「修繕積立金」などの経費が重なり、不動産所得を赤字にしやすい状態にあります。
しかし、時間が経過するにつれて状況は変わっていきます。
- ローンの利息部分が減っていく:ローンを返済するにつれて、経費にできる利息部分が減少します。元本返済は経費になりません。
- 物件が値下がりする:新築プレミアムがなくなり、家賃も下落していきます。購入時に月8万円だった家賃が、10年後には月6万〜6.5万円になることも珍しくありません。
- 管理費・修繕積立金が値上がりする:築年数が経過するほど、これらのコストは上昇していきます。
- 空室リスクが高まる:築古になるほど入居者の確保が難しくなります。
結果として、購入から5〜10年が経過した頃には、不動産所得が「黒字」に転換するケースが出てきます。黒字になると、今度は不動産所得に対して税金がかかります。つまり、節税どころか税負担が増えるという逆転現象が起きるわけです。
私JACKがこれまでサロンで見てきたケースでは、「最初の3年で合計30万円の節税ができた」と喜んでいた方が、7年後には毎年15万円の税金を余分に払うはめになった、というケースがありました。差し引きでトータルマイナスになるまで時間はかかりませんでした。
「年間20万円の節税」と言われたが、実際の収支はどうなのか
具体的な数字で見てみましょう。よくある営業トークのシナリオです。
年収600万円のサラリーマンが、価格3,500万円の新築ワンルームを購入したとします。
営業マンが提示する「節税効果」の例
- 家賃収入:月8万円 × 12ヶ月 = 96万円
- ローン返済:月10万円 × 12ヶ月 = 120万円
- 管理費・修繕積立金:月1.5万円 × 12ヶ月 = 18万円
- 減価償却費:約42万円(建物2,000万円 ÷ 47年)
- ローン利息部分:約80万円(当初数年)
- 不動産所得:96万 – 18万 – 42万 – 80万 = ▲44万円の赤字
この44万円の赤字を給与所得と損益通算すると、課税所得が44万円下がります。年収600万円帯の実効税率(所得税+住民税)は約30%前後なので、44万円 × 30% = 約13万円の税金が戻ってくる計算になります。
「年間13万円の節税!」と喜ぶ前に、出ていくお金を確認してください。
- 毎月の持ち出し:ローン返済10万円 + 管理費等1.5万円 – 家賃8万円 = 月3.5万円の持ち出し
- 年間持ち出し:3.5万円 × 12 = 42万円
42万円を自腹で払って、13万円が戻ってくる。差し引き29万円のマイナスです。これを「節税になる」と言えるでしょうか?
さらに言えば、このシミュレーションは「空室なし」「家賃下落なし」「修繕費なし」という理想の条件を前提にしています。現実はそうはいきません。
空室が1ヶ月発生しただけで8万円の収入が消えます。退去のたびにクリーニングや壁紙交換で5万〜15万円の費用が発生します。これらを加味すると、実際の年間マイナスは40万円を超えることも珍しくないのです。
「減価償却が終わったら売ればいい」という罠
この反論に対して、賢い営業マンはこう言います。「減価償却が終わる頃(20〜30年後)に売却すれば問題ないですよ」と。
しかし、これにも大きな問題があります。
売却時に「譲渡税」がかかる
減価償却を使うと、帳簿上の建物価格(取得費)が毎年下がっていきます。これを「簿価が下がる」と言います。売却時には、売却価格と取得費(簿価)の差額に対して「譲渡所得税」がかかります。
たとえば、建物部分の簿価がゼロに近くなった状態で2,000万円で売却した場合、2,000万円近くが課税対象となります。長期譲渡所得の税率は約20%なので、約400万円の税金が発生します。
つまり、毎年の節税で浮かせたお金が、売却時に一気に回収される構造になっているのです。これは「課税の繰り延べ」に過ぎず、本質的な節税にはなっていません。
そもそも売れない可能性がある
もう一つの問題は、20〜30年後にその物件が売れるかどうかです。新築で購入したワンルームマンションは、築20年を超えると買い手がつきにくくなるケースが多いです。特に地方や人口減少エリアでは、築古ワンルームの流動性は著しく低下します。
「売ろうと思ったら買い手がつかない」「売れても購入時の半額以下」——こういうケースを、私JACKのサロンメンバーから何件も聞いてきました。特に、地方都市の駅から徒歩10分以上の物件は、築古になると本当に売れなくなります。手元に残るのは、古くて価値のないマンションの一室と、残ったローンという最悪の組み合わせになることもあります。
営業マンが絶対に言わない「本当のコスト」
節税の話をするとき、営業マンが意図的に省略するコストがあります。投資判断をする前に、必ず確認すべき項目です。
① 購入諸費用(取得コスト)
不動産を購入する際には、物件価格の5〜8%程度の諸費用がかかります。3,500万円の物件なら175万〜280万円です。これは全額現金での支出になります。この費用を取り戻すだけでも、相当な時間がかかることを理解してください。
② 固定資産税・都市計画税
毎年かかる固定資産税と都市計画税も経費になりますが、これ自体が年間10万〜20万円ほどの出費です。経費になるから得だと錯覚しがちですが、払うお金には変わりません。
③ 空室・原状回復費
入居者が退去するたびに、原状回復費(クリーニング・壁紙交換・設備修繕など)がかかります。1回の退去で5万〜30万円の費用が発生することも珍しくありません。また、次の入居者が決まるまでの空室期間は家賃収入がゼロになります。賃貸経営では2〜3年に一度の退去があると考えておく必要があります。
④ 大規模修繕に伴う修繕積立金の値上がり
マンションは築10〜15年を目安に大規模修繕が行われます。このタイミングで修繕積立金が大幅に値上がりするケースが多く、月1万円台だったものが2〜3万円になることもあります。これはマンション全体の決定事項なので、一室の所有者として止める手段はありません。
⑤ 金利上昇リスク
変動金利でローンを組んでいる場合、金利が上昇すると毎月の返済額が増えます。2024年以降、日本でも金利上昇の動きが本格化しており、このリスクは以前よりも現実味を帯びています。0.5%の金利上昇でも、3,500万円のローンでは月々の返済が数万円単位で増えるケースがあります。
「節税」目的の投資が危ない本当の理由
節税を目的に不動産投資をすることが特に危険な理由は、「投資の本質」を見失わせるからです。
本来、不動産投資の目的は「キャッシュフローを生み出すこと」「資産価値を高めること」です。しかし、節税目的で購入した場合、毎月の持ち出しが出ていても「節税になっているから大丈夫」と自分に言い聞かせてしまいます。
でも考えてみてください。「節税のために毎月3〜5万円持ち出すなら、その分を株式や積立NISAに回した方が、トータルでプラスになる」と思いませんか?
私JACKはよく、こういう言い方をします。「節税のために損をするのは本末転倒ですよ」と。払う税金を減らしたいなら、そもそも赤字投資をしなければいいだけです。
また、節税トークには心理的な落とし穴もあります。「どうせ税金で持っていかれるなら不動産に使った方がいい」という感覚に陥りやすいのです。しかし冷静に考えると、税金として払う金額より多くのお金を毎月持ち出しているケースがほとんどです。感情に乗せられた判断は、後から取り返しのつかない損失を生みます。
本当に「節税効果がある」不動産投資とは何か
では、不動産投資で本当に節税メリットを享受できるのはどんなケースでしょうか。
結論から言えば、「高額所得者」が「キャッシュフローが出る物件」を適切な価格で購入する場合に限られます。
年収が高いほど節税効果は大きい
節税効果は税率に比例します。年収1,000万円以上の方は実効税率が40〜50%近くになるため、同じ赤字額でも戻ってくる税金の金額が大きくなります。年収400万〜600万円程度の方では、節税効果は限定的です。それにもかかわらず、新築ワンルームの営業対象の多くはこの年収帯のサラリーマンです。なぜなら、この層が一番ローンを組みやすく、「節税」という言葉に感情的に反応しやすいからです。
キャッシュフローが出る物件を選ぶ
毎月の持ち出しが発生する物件は、節税のためにお金を払い続けているだけです。理想は、家賃収入からローン・諸費用を差し引いても毎月プラスになる物件です。
私が大阪で推奨している戸建投資は、適切に選べば利回り10〜15%を実現できるケースがあります。キャッシュフローがプラスであれば、節税を「おまけ」として享受できるのです。節税が目的になると物件選びが歪みますが、キャッシュフローを優先すると自然と良い物件に行き着きます。
新築ではなく中古・築古が狙い目
減価償却の観点では、実は新築より中古・築古の方が節税効果が高いケースがあります。木造の場合は耐用年数が22年で、法定耐用年数を超えた築古物件は4年で全額償却できます。短期間で多額の減価償却費を計上できるため、節税効果が集中します。ただし、これもキャッシュフローがプラスであることが前提です。
「節税トーク」に引っかからないための5つのチェックポイント
最後に、営業トークに惑わされないための実践的なポイントをまとめます。
① 「節税額」より「毎月の持ち出し額」を先に計算する
節税でいくら戻るかより、毎月いくら手元から出ていくかを最初に確認してください。持ち出しが発生する投資は、原則としてやめておくべきです。「月の持ち出しが何万円になるか」を業者に明示させてください。それを嫌がる業者は信頼できません。
② 減価償却終了後のシミュレーションを求める
減価償却が終わった後の収支シミュレーションを提示してもらいましょう。それを見せたがらない業者は信頼できません。購入から20年後・30年後の収支まで示せる業者だけが、本当に顧客の利益を考えているといえます。
③ 売却時の譲渡税を試算してもらう
購入時だけでなく、売却時のコストも含めた「トータル収支」を確認することが重要です。「売れたとしていくら手元に残るか」を明確にしてもらいましょう。
④ 「節税」より「キャッシュフロー」を投資基準にする
節税はあくまでおまけです。物件そのものが収益を生み出せるかどうかを判断基準にしてください。「節税になるかどうか」ではなく「毎月プラスになるかどうか」を問い続けることが、賢い投資家の姿勢です。
⑤ 税理士など第三者に相談する
購入前に、不動産業者と利益相反のない独立した税理士に相談することを強くお勧めします。「本当に節税になるか」を客観的に確認してもらうことが、失敗を防ぐ最善策です。「業者紹介の税理士」ではなく、自分で探した税理士に見てもらうことがポイントです。
まとめ:節税は「おまけ」であるべき、目的にしてはいけない
新築ワンルームマンション投資の「節税効果」という営業トークは、完全な嘘ではありません。しかし、その効果は限定的・一時的であり、長期的に見ると損をするケースがほとんどです。
特に年収500〜700万円前後のサラリーマンをターゲットにした「節税+不動産投資」の組み合わせは、業者側にとって非常に売りやすい商品です。感情に訴えやすく、複雑な仕組みが理解しにくいからこそ、業者にとっての「カモ」になりやすいのです。
投資家JACKのサロン「コアメンバー」では、11年間にわたってこうした「節税トーク」の被害を受けた方々の相談を受け、正しい不動産投資の考え方を発信し続けてきました。「節税のために買ったはずが、気づいたら毎月赤字で、出口も見えない」という状況に陥った方を何人も救済してきた経験から、私JACKは確信を持って言います。
「節税になる」という言葉は、不動産投資における最も危険な入り口の一つです。
大切なお金と大切な時間を守るために、「節税になる」という言葉を聞いたときこそ、立ち止まって冷静に考えるようにしてください。本当に良い投資は、節税がなくても収益が出るものです。それが不動産投資の原点だと、私JACKは確信しています。
ご不明な点や具体的なご相談は、ぜひ当社・ユナイテッドコンサルティングまでお気軽にお問い合わせください。大阪での不動産投資を、正しい知識と戦略でサポートいたします。
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